「勢いで退職届を出してしまったけれど、やっぱり会社に残りたい」
「退職届を提出した後でも取り消せる?」
「退職願なら撤回できるって本当?」
退職を決意して会社に書類を提出したものの、時間が経って気持ちが変わることもあるでしょう。
結論からいうと、一度提出した退職届を撤回できるかどうかは、書類のタイトルだけでは決まりません。
重要なのは、その意思表示が、
会社との合意によって退職するための「合意解約の申込み」なのか、それとも労働者側から一方的に労働契約を終了させる「辞職」の意思表示なのか
という点です。
厚生労働省の資料でも、合意解約の申込みとしての退職願については、原則として使用者による承諾の意思表示がなされるまで撤回できるとした裁判例が紹介されています。一方、一方的な辞職の意思表示は、使用者に到達して効力が生じた後は原則として撤回できないと整理されています。
この記事では、退職届を提出した後に撤回できるケース・難しいケース、退職願との違い、撤回したい場合の対応について解説します。
退職届は提出した後でも撤回できる?
「退職届を出したら、もう絶対に取り消せない」と思っている方もいるかもしれません。
しかし、必ずそうとは限りません。
退職の意思表示には、大きく分けて、
①会社に退職を申し込み、会社が承諾することで退職する「合意解約」
と、
②労働者から一方的に労働契約を終了させる「辞職」
があります。
どちらに該当するかによって撤回できるかどうかが変わります。
合意解約の申込みなら承諾前に撤回できる場合がある
「○月○日付で退職させてください」など、会社に退職について承諾を求める意思表示であれば、合意解約の申込みと判断されることがあります。
厚生労働省の資料では、裁判例について、合意解約の申込みとしての退職願は、使用者による承諾の意思表示が労働者に到達するまで、一定の場合を除いて撤回できるとの考え方が紹介されています。
そのため、
「昨日退職願を出したけど、やっぱり撤回したい」
という場合、会社側による承諾がまだ行われていなければ、撤回できる可能性があります。
ただし、会社側の手続きがどこまで進んでいるかなど、具体的な事情によって判断が変わります。
会社がすでに承諾している場合は撤回が難しくなる
合意退職の場合でも、会社がすでに退職を承諾していると、原則として労働者側だけで撤回することは難しくなります。
厚生労働省が紹介する「大隈鉄工所事件(最高裁第三小法廷・昭和62年9月18日)」では、人事部長に退職承認の決定権があり、その人事部長が退職願を受理したことで即時承諾が成立したと判断され、撤回が認められませんでした。
つまり、
「まだ退職日になっていないから撤回できる」
とは限らない点に注意しましょう。
重要なのは退職日まで何日あるかではなく、退職の意思表示の性質や、会社側の承諾が成立しているかです。
「退職届」と「退職願」は何が違う?
一般的には、
| 書類 | 一般的な意味 |
| 退職願 | 会社に退職を願いでる書類 |
| 退職届 | 退職する意思を会社へ届け出る書類 |
という違いがあります。
そのため、「退職願は撤回できるけれど、退職届は絶対に撤回できない」と説明されることがあります。
しかし、書類に「退職願」「退職届」のどちらと書いてあるかだけで法的な性質が自動的に決まるとは限りません。
実際に何を伝えたのか、会社の就業規則や退職手続き、提出した経緯などから、合意解約の申込みなのか一方的な辞職なのかが問題になります。
厚生労働省の労働契約等解説セミナー資料でも、一方的な「辞職」と、使用者に退職を願い出る「合意退職」を区別して説明しています。
したがって、
「退職願だから撤回できる」
「退職届だから撤回できない」
と書類名だけで判断しないことが大切です。
一方的な「辞職」の意思表示だった場合は?
ここは特に重要です。
厚生労働省資料では、労働者による一方的な解約としての辞職について、その意思表示が使用者に到達した時点で解約告知として効力を生じ、原則として撤回できないと整理されています。
つまり、
「会社が承諾していないから、いつでも取り消せる」
とは限りません。
会社の承諾を必要としない形で明確に辞職を通知した場合には、合意退職とは扱いが異なります。
この違いがあるため、退職届を撤回できるかについてネット上の情報だけで自己判断するのは注意が必要です。
退職届を撤回したいと思ったらどうすればいい?
撤回したいと決めたのであれば、できるだけ早く会社へ伝えることが重要です。
1.できるだけ早く撤回の意思を伝える
時間が経過すると、会社が退職を承認したり、後任の手配などを進めたりする可能性があります。
「やっぱり辞めたくない」と決めたのであれば、先延ばしにせず、
「先日提出した退職に関する申出を撤回したい」
という意思を明確に伝えましょう。
2.口頭だけでなく記録を残す
撤回を伝えた・伝えていないというトラブルを避けるため、メールなど記録が残る方法を併用することも考えられます。
いつ、誰に、どのような内容を伝えたのか保存しておきましょう。
3.会社がすでに承諾しているか確認する
退職願を提出している場合は、
「すでに会社として退職を承認していますか?」
と確認することも重要です。
上司に渡しただけなのか、退職を承認する権限のある担当者まで手続きが進んでいるのかによって、判断に影響する場合があります。
上司が受け取っただけなら撤回できる?
これも一律には判断できません。
「直属の上司に渡しただけだから大丈夫」とは限らないからです。
厚生労働省が紹介する裁判例では、退職願を誰が承認できるのかという権限の所在も問題となっています。
たとえば、
上司には単に書類を受け取る権限しかないのか、それともその上司自身に退職を承認する権限まであるのか。
会社によって異なります。
就業規則や会社の退職手続きも確認しましょう。
「退職届を返してもらった=撤回成立」と考えていい?
会社から退職届そのものを返してもらえたとしても、それだけで法的な問題がすべて解決したと断定するのは避けたほうがよいでしょう。
重要なのは、会社と労働者の双方がどのような意思表示をして、退職手続きがどの段階にあるのかです。
会社が撤回を認めるのであれば、
「退職の申出を撤回することについて会社も了承した」
ということが分かる記録を残しておくと、後の認識違いを防ぎやすくなります。
会社が「もう撤回できない」と言ってきたら?
まず確認したいのは、
なぜ撤回できないと言われているのか
です。
「退職届という名前だから」というだけなのか、すでに退職を承認して合意が成立しているのか、一方的な辞職としてすでに効力が生じているのか。
理由によって話が違います。
退職の撤回について争いが生じている場合には、個別事情による法的判断が必要になる可能性があります。
その場合は、労働局等の相談窓口や弁護士など、適切な専門機関への相談も検討してください。
無理やり退職届を書かされた場合は別の問題になることも
「上司に囲まれて退職届を書かされた」
「辞めなければ懲戒解雇すると言われ、怖くなって書いた」
など、自分の自由な意思で提出したとはいえない事情がある場合には、単純な「退職届の撤回」とは別の法的問題が生じる可能性があります。
厚生労働省資料でも、一方的な辞職について、意思表示に問題がある場合には民法上の無効・取消しが問題となり得る旨が整理されています。
具体的な事情によって判断が大きく変わるため、このような場合は専門家への相談をおすすめします。
退職届を撤回する前にもう一度考えておきたいこと
撤回できる可能性があるからといって、すぐ撤回するのが必ず正解とは限りません。
そもそも、なぜ退職しようと思ったのでしょうか。
人間関係、長時間労働、給与、仕事内容、上司との関係など、退職を決断した原因が何も解決していなければ、一度撤回しても再び「辞めたい」と感じる可能性があります。
反対に、
「感情的になって退職を申し出てしまった」
「会社と話し合った結果、問題が解決した」
というケースなら、撤回を検討する意味もあるでしょう。
退職する・残るのどちらを選ぶとしても、自分が後悔しない選択をすることが大切です。
退職届の撤回についてよくある質問
Q.退職届を出した翌日なら撤回できますか?
翌日だから必ず撤回できるわけではありません。
合意解約の申込みで、まだ会社側の承諾が成立していなければ撤回できる可能性がありますが、一方的な辞職の意思表示であれば扱いが異なります。
Q.会社が撤回を認めてくれれば残れますか?
会社と労働者双方が退職を取りやめることで合意できるのであれば、その合意内容を確認しましょう。
口頭だけでなく、後のトラブル防止のため記録を残しておくことも大切です。
Q.退職願なら必ず撤回できますか?
いいえ。
合意解約の申込みとしての退職願であっても、会社による承諾が成立した後は原則として一方的な撤回は難しくなります。
Q.退職届なら絶対に撤回できませんか?
書類のタイトルだけで一律には判断できません。
実際の意思表示の内容や提出時の状況などから判断する必要があります。
まとめ|退職届を撤回したいなら早めに意思を伝えよう
退職届を一度提出したからといって、すべてのケースで「絶対に撤回できない」と決まっているわけではありません。
一方で、いつでも自由に取り消せるわけでもありません。
ポイントは、
- 合意退職の申込みなのか、一方的な辞職なのか
- 会社による承諾が成立しているか
- 誰に提出し、その人に承認権限があったのか
- どのような経緯・内容で退職を申し出たのか
です。
「退職届を出したけど気持ちが変わった」という場合は、まずできるだけ早く会社へ撤回したい旨を伝え、現在の手続き状況を確認しましょう。
一方で、「本当は辞めたいけれど、自分で会社と話すのが怖くて撤回しようとしている」という場合は、無理に一人で抱え込む必要はありません。
退職サポートDREAMでは、退職に関するお悩みや会社への連絡についてご相談を受け付けています。
「会社と直接話したくない」
「どう伝えればいいかわからない」
「退職について不安がある」
という方は、状況に合った方法を一緒に整理していきましょう。
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※個別の法的判断や法律事務については、必要に応じて弁護士等の専門家へご相談ください。


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